サイクリングでダイエットは可能?【前編】

サイクリングでダイエットしたいですよね。サイクリング自体楽しくて最高なのに、ついでにスリムになれたら嬉しすぎます。でも可能なんでしょうか? そこのところについてです。

サイクリングの運動強度(METs)

サイクリングの運動としてのハードさ(運動強度)ってどれくらいなんでしょう? そういった運動強度を示す単位としてMETsがあります。厚生労働省の説明によると、

安静時(静かに座っている状態)を1とした時と比較して何倍のエネルギーを消費するかで活動の強度を示します。

澤田 亨. メッツ / METs. e-ヘルスネット. https://www.e-healthnet.mhlw.go.jp/information/dictionary/exercise/ys-004.html 厚生労働省. (2021)

つまり、安静時=1METs を最小METsとし、あとは数字が大きければ大きいほどハードな運動ということですね。具体的な各種スポーツのMETsは、国立健康・栄養研究所の栄養・代謝研究部のホームページにある「身体活動のメッツ(METs)表」という資料で知ることが出来ます。50ページほどの資料ですので、少し抜粋してみます。

METs    種目   個別活動
3.5自転車レジャー、8.9km/時
5.8自転車レジャー、15.1km/時
6.8自転車16.1-19.2km/時、レジャー、ゆっくり、楽な労力
8.0自転車19.3-22.4km/時、レジャー、ほどほどの労力
10.0自転車22.5-25.6km/時、レース、レジャー、速い、きつい労力
14.0自転車山道、上り坂、きつい労力
16.0自転車山道、競技、レース
6.0ランニング6.4km/時、107.3m/分
8.3ランニング8.0km/時、134.1m/分
10.5ランニング10.8km/時、179.7m/分
11.5ランニング12.1km/時、201.1m/分
12.8ランニング14.5km/時、241.4m/分
23.0ランニング22.5km/時、375.4m/分
4.5テニスダブルス
8.0テニスシングルス
5.3水泳平泳ぎ、レクリエーション
10.3水泳平泳ぎ、全般、トレーニング、競技
8.3水泳クロール、ふつうの速さ、45.7m/分未満、きつい労力
10.0水泳クロール、速い、68.6m/分未満、きつい労力
3.5歩行散歩

このMETs表によると、

  • サイクリング(19.3-22.4km/時)=8.0METs
  • ランニング(8.0km/時)=8.3METs
  • テニス(シングルス)=8.0METs
  • クロール(ふつうの速さ)=8.3METs

が同じくらいの運動強度ってことですね。
ここでちょっと「ん?」ってなります。サイクリングってそんなにハードでしたっけ?

たしかにサイクリングはたくさん汗もかくし、坂を登れば息も切れるし、疲れることは疲れますけど、信号待ちの間は休めるし、なんなら遠くの信号が赤ならもう漕ぐのをやめちゃうし、それでもスィ~って進むし、楽チンな面もあるのですよね。なので、この表はちょっと実感と合わない感じがします。

このMETs表の”実感と合わない感じ”が、サイクリングでダイエットが可能か問題の根深さの要因になっているのですが、とりあえずそれは一旦脇に置いておいて、話を先に進めます。

サイクリングの消費カロリー

METsが求まると、次の計算式で消費カロリーが求まります。

METs × 実施時間(h) × 体重(kg) × 1.05 = 消費エネルギー(kcal)

さっそく計算してみましょう。
 ・METs:8.0(さっきの数字を採用)
 ・実施時間:5時間(ロングライドだとこれくらいかな)
 ・体重:80kg(仮です
とすると、

8.0 × 5(h) × 80(kg) × 1.05 = 3360(kcal)

ここでまた「ん?」ってなります。3360kcalって、ラーメンでいったら6~7杯分です。そんなにカロリー消費するんでしょうか?。

たしかにサイクリングはお腹も減るし、体が飢餓状態になってハンガーノックになってしまうこともありますが、それならなんでこの腹の肉は落ちないのかな?って思います。なので、この計算式もちょっと実感と合わない感じがするのですよね。

サイクリングのダイエット効果が過大評価される理由

なぜMETsや消費カロリーが実感よりも高めの数値なのかは、色々な理由が考えられます。

METs表で想定された自転車よりも、私達が良いスペックの自転車に乗っているせいかもしれません。あるいはMETs表で想定された乗り手よりも、私達の技術的スペックが勝っているせいかもしれません。

消費カロリー計算式においても、実施時間(h)はロングライドにかかった時間そのままで良いのかという疑問があります。現実のロングライドでは、運動強度が上がる時もあれば下がる時もあります。信号待ちの時間や下り坂を利用して、疲労を回復させながら走ることも可能です。コンスタントに一定の運動強度で走っているわけではありません。

そういった諸々の定量的要因の他に、ユーザーとメーカーの心理的要因も見逃せません。

  • ユーザー:サイクリングはダイエットに有効だと思いたい(願望)
  • メーカー:サイクリングはダイエットに有効だと思わせたい(商売)

こういった様々な要因を背景として形成される「サイクリングはダイエットに有効なんだ!!」という妄信的雰囲気に、私達は知らずしらずのうちに巻き込まれている可能性があります。そしてそれこそがサイクリングダイエットの一番の障害な気がします。

実際のサイクリングは、期待したほどカロリーを消費しません。METs表ほどの運動強度は見込めません。消費カロリー計算式の計算よりもカロリーは消費されません。そのことに自覚的でいる必要があります。「サイクリングのダイエット効果なんて世間で言われてる程度の半分以下でしょ」というスタンスでいられれば、サイクリングダイエットは成功するかもしれません。

サイクリング-ダイエット問題は根深くて
つい長文になっちゃいました。
とりあえず一旦ここまでです。
ありがとうございました!!

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