5～6年前くらいのこと。田園調布に仕事案件があって、毎朝、早めにいって、駅前のカフェで時間をすごすことがありました。
私の家から田園調布まで、チャリだと50分くらいですね。絶対に遅刻できない案件だったので、早めに家を出て、駅前カフェ（スタバ）でコーヒーを飲んで時間がくるのを待つ、という数日。
田園調布のスタバって、やっぱり客層が違いますね。庶民っぽさがなくて、ほぼ上級オンリーな感じ。私には縁遠い世界😅
そんなスタバに、毎朝、決まってあらわれる、サイクリストのおじいさんがいました。年は70歳より上かな。乗っているのはピナレロドグマ。派手派手なサイクルジャージ、レーパン、ヘルメット、アイウェアのキメキメ姿。そんなおじいさんが、毎朝、コーヒーをテイクアウトしていきます。
これからロングライドに行くとか、ロングライドしてきたとか、そういう雰囲気ではありません。たぶん、お近くにお住まいなんでしょうね。毎朝、ジャージに着替えて、ピナレロに乗って、スタバに行って、コーヒーをテイクアウトして、家に帰って、飲むってのが、おじいさんの日課だったんだとおもいます。
「あ、いいな」
そう思いました。正直なんだなぁ、って。
田園調布、スタバ、ピナレロドグマ。顕示的な記号がキラキラしてます。ご近所まで行くのに、わざわざサイクルジャージに着替えるなんて、御大層で、コメディみたい。でも、それでいいんじゃないかなぁ。
人生の物語は、後半になると、すこし歪みます。立派に老いるなんて、たぶん不可能なんじゃないかな。こだわりをかかえながら、どこか滑稽で。私もそういうジジイになろう、なんて思ったのでした。
（おしまい）