令和5年4月1日から自転車のヘルメット着用が努力義務化されました。とうとうこの日がきたかぁ、という感じです。
ヘルメット着用は結構なことなんですけど、少しひっかかるところもあります。おかしな世の中になってないかな、みたいな。そこのところをちょっと書いてみようと思います。
ヘルメット努力義務化の前に
To All Municipal Decision Makers: Next time you think just adding a line of paint for a bike lane is good enough, please remember who will be using it. #HeresSomePaintKid #GoodLuck pic.twitter.com/7Wydp5aBPc
— Tom Flood (@tomflood1) April 30, 2018
この画像、こわいですね。。。
ヘルメットを着用して、白線ペイントがあっても、怖いものは怖いです。やっぱり、ヘルメットと白線ペイントだけでは、安全は十分じゃない気がします。
自転車ユーザー目線で恐縮ですが、幅広の自転車レーン、それか自転車レーンを車から物理的に分離する工作物(ポールとか縁石とか)があると、安心しますね。理想的な自転車レーンって感じがします。
理想的な自転車レーンがあれば、ヘルメット無しでも危険はかなり軽減されるでしょうね。ヘルメットを義務化しても、冒頭の画像みたいにレーンが狭くてペイントだけだと、かなり不安です。なのでヘルメット義務化って、自転車レーン整備がまずありき(もしくはセット)なんじゃないかなって思います。
もしかしたら「日本の道路は狭いから」と反論されるかもしれません。道路が狭いのは確かですが、だから自転車ユーザーを危険にさらして良い、とはならないはずです。自転車レーンが整備できないほど狭い道であれば、ボンエルフやハンプを設置して車の速度を制限する等、やれる事はあるんですよね。
話を戻しますが、今回の努力義務化の際に、
ゆくゆくは自転車レーンを車道から物理的に分離します。但しそれには時間がかかるので、それまでの間、暫定的な安全措置としてヘルメット着用を努力義務化します。
なんて説明でもあれば良かったですね。でもそういった説明は無く、今後も自転車レーンは物理的に分離されないままヘルメット着用だけが義務化(そして罰則化)される未来が何となく予見されて、やるせない気持ちになります。
AutolandとFietsland
When your infrastructure design is based around protecting and prioritizing its most vulnerable users, the appearance of the demographic will noticably shift.https://t.co/YgmpnWxAuj pic.twitter.com/WPqjzCfDwd
— American Fietser (@AmericanFietser) May 10, 2022
Autolandは自動車の国という意味です。
Fietslandは自転車の国という意味です(Fiets=自転車のオランダ語)。
Autolandの自転車ユーザーはヘルメット&蛍光ベストなのに対し、Fietslandはヘルメット無し&普段着です。Meme画像なので多少誇張されているにしろ、おもしろい視点だなと思います。
さて、日本はヘルメット着用に舵を切ったわけですけど、このmemeによると、日本はAutolandということになります。
たしかに今の日本はAutolandかもしれません。別にそれならそれでOKな気もしますが、比較のため、ちょっと海外の都市を見てみましょう。ユトレヒト、パリ、ロンドンです。
The Friday evening rush hour unfolds.
— De Filmende Fietser (@FilmendeFietser) January 13, 2023
🚲🚲🚲🚲🚲🚲🚲🚲🚲🚲🚲🚲 pic.twitter.com/wUdHTfLwXr
I lived in #Paris in the 90s. A city totally dominated by cars. Hard to walk in, a nightmare to ride a bike in.
— Taras Grescoe 🚇 @straphanger@urbanists.social (@grescoe) June 18, 2020
Look at it now: a city where cars, rather than people, have trouble moving.
Bravo / chapeau!
Via @EmmanuelSPV
pic.twitter.com/3NgRDlriq7
Your city can change too.
— Jono Kenyon (@Jono_Kenyon) April 28, 2022
'London on bike' pic.twitter.com/hhZz8PXt4O
知らないうちにヨーロッパの都市って、自転車がこんなに増えていたんですね。しかも自転車レーンが広くて走りやすそうです。車のレーンを減らして、自転車レーンに変えたんでしょうね。海外にできたのだから、日本にだって出来ると思うのですが、どうなんでしょう。
でも、車のレーンを減らすのって、結構大変だと思うのですよね。どこかの道路で車の交通量を減らせば、別の道路では交通量が増え、騒音や排ガスも増えるわけです。そんな利害調整を外国人はよく出来たなって思います。
日本人もやれば出来るかもですが、ちょっと無理かもしれないですね。たかが自転車ユーザーの安全のために、国や自治体がそんな苦労を引き受けるとは思えません。それに、車レーンと自転車レーンの、どちらを優先すべきかは議論がわかれる話でしょうし。そんな面倒な議論はせずとも、手っ取り早くヘルメットを義務化しちゃえば、道路は現状のままでも安全が達成できる(と錯覚した)ってのが今回の経緯のように思います。
啓蒙?
これはとある都議会議員さんのTweetですが、
自転車施策に関する要望を、知事に行ってきました。
— 白戸太朗【東京都議会議員】 (@tarostokyo) April 27, 2023
1.ヘルメット着用努力義務の啓もう促進について
2.自転車利用促進に向けて、都の行う「Grand Cycle TOKYO」を活用すること。
3.タンデム自転車の全面開放の検討を進めること。https://t.co/l9Peqx6HDR pic.twitter.com/wnLDBUWD2Z
道路の環境整備には何も触れずに、ヘルメットだけなんですよね。ちょっと残念な気がします。議員さん方には、条例の制定権、予算の議決権、税金の徴収権があるわけです。強力な権限です。新しい未来を選択し実現できる権限です。道路環境を整備することもできるはずです。なのにやることがヘルメットの「啓蒙」。もうちょっと、こう、何かやれないのかなって思います。せっかく議員さんなのだから、議員さんにしか出来ないことがあると思うんですよね。
PSA pic.twitter.com/j5VbcS1TVa
— Tom Flood (@tomflood1) September 16, 2022
ちなみにこの議員さんの言う「Grand Cycle TOKYO」とはイベント団体のことです。昨年はレインボーライドを開催した団体です。でも自転車利用促進って、本来、日常のクオリティをあげる話であって、そこに非日常的なイベント団体を関与させるのは、なんか理屈があわない気がしますね。自転車利用を促進させるのは道路環境の整備とか、そういう地道な努力であって、イベント団体を活用することがなぜ必要なのか、ちょっと不思議です。まあ、私は神奈川県民ですので、東京都の議員さんを不思議がっても仕方ないのですけど(笑)
と、気づいたら結構な長文になってました。本当はまだまだ書きたいのですけど、一旦ここで。読んでくださった方、ありがとうございました。
(おしまい)