申し上げます。申し上げます。あの人達は酷い。酷い。厭な奴らです。ああ我慢ならない。
あの人達は、ロードバイク乗り、通称ローディーです。私も自転車乗りですが、フラットバーロードに乗っています。ハンドルの形が違うだけで、ロードはロード、同じカテゴリーなのです。それなのに、ハンドルの形が違うだけで、こんなにスピードが違う。こんなのはおかしい。ドロップハンドルとフラットバーハンドル、大した違いは無い筈だ。それなのにスピードが全然違う。ロードのほうが全然速い。こんな不公平はおかしい。ああ、もう、いやだ。
私は自転車乗りですが、週に2回ほどジムでトレーニングもしています。それなのに、ロードバイクに乗ったヒョロヒョロの奴らが、いとも簡単に私を抜かしていく。鶏ガラみたいなガリガリの老人が、颯爽と私を抜かしていく。週2でジムトレしている私が、ヒョロヒョロやガリガリに抜かされる。こんなのはおかしい。こんなおかしい世の中が、あってたまるものか。不正、いや、まさか、そんな事は絶対にありえないはずですが、でも、おかしい、それに似た怪しいイカサマが行われているに違いない。ああ、いまわしい。
私はサイクリングの回数もこなしています。毎月200kmも走ります。ホビーライダーですけど、土日、平日、関係なく、天気が良いと、自然と走りたくなるのです。平日のサイクリングは、心が平穏です。ローディーがあまり走っていませんので、自分のペースで、サイクリングに没頭できます。でも土日ともなると、あの下衆野郎どもが、はい、ええ、すみません、つい口汚く罵ってしまいました、あのローディーの連中が、群れをなして道を走っています。トレック、ビアンキ、スペシャラ、ピナレロ、ジャイアント、目のくらむような光景です。ある時、私は、とあるローディーに追い抜かれまいと、必死で漕ぎましたが、やっぱり駄目でした。そのローディーは私を追い抜くときに「速イネーw」なんて声をかけてきて、私は耳まで顔を真っ赤にして、うつむくしかありませんでした。
くだらない。サイクリングなんて、くだらない。くだらない趣味だ。いや、違う。くだらない連中ばかり。いや、違う。くだらないのは私だった。こんな仕打ちにメソメソして、もっと強くならなければ。ジムにも真面目に通って、体も鍛えなければ。はい、申し訳ありません。嘘を言いました。今はジムに週2も行ってません。この頃は週1、下手したら週0。この出っ張った腹を見たら一目瞭然の嘘でした。正直に申し上げますと、ジムに行ってマシンに座り、ガッチャン、ガッチャン、ガッチャン、これのどこが面白いのか、全くわかりません。それに比べて、サイクリングは、楽しい。あぁ、本当に楽しい。
ある時、いつものようにサイクリングをしていましたら、その日も道は、トレック、ビアンキ、スペシャラ、ピナレロ、ジャイアント、目のくらむような光景で、私はふと横道に入り、一人、キャベツ畑の中を走ることにしました。坂道を尾根まで登り、振り返ると、一面のキャベツ畑が、南に向かって傾斜しているのが一望できました。キャベツ畑の向こうには海が見え、海は陽光でキラキラしていて、私は少年のような好奇心で、いつまでもそのキラキラを…、ええ、はい? フラバはハンドルをドロハンに変えれば簡単にロードバイクになる? なる程、はははは。いや、やめておきましょう。ロードバイクに乗りたくて嫉妬している訳では無いんだ。え? ならば、ブルホーンハンドルはどうか? ドロハンの下ハン部分を切断して天地逆に取付け、シフトブレーキをSTIに換装すればブルホーンに出来ると? ほう、それは面白そうです。なんと、ちょうど今こちらのショップに在庫が? 素晴らしい。それでは、ハンドルとSTIレバー、ありがたく購入させて頂きます。はい、はい、申し遅れました。私は今日、サイクリングがてら、たまたま前を通りがかったので、ちょっと店内を覗いてみようかと、立ち寄ってみただけの、フラバ乗りでございます。
(おしまい)
自転車乗り訴え
Bitly